火曜日の昼下がりに、こんにちは。
先日の予算委員会での台湾有事に関する発言を機に、何やら中国がえらい剣幕で怒っていますね。インバウンド需要で生計を立てる事業者は大丈夫でしょうか。局長です。
─── さて、2018年から再開した「第二次・家づくり計画」新シリーズの続編を。

憧れのRC造(鉄筋コンクリート造)を断腸の思いで諦め、工法を「重量鉄骨造」に方向転換し、静岡県が本社ながら横浜支店がある某住宅メーカーとのプランニングも順調に走り出していた2021年11月、間取りや外観が固まってきたところで、実は裏側に潜んでいた気密性・断熱性に関する課題にも改めて向き合う必要が生じた。
【前話のおさらい】
前話でも説明したとおり、鉄骨造、とくに重量鉄骨造は断熱性が良くない。

むき出しにした鉄骨柱など、断熱処理がされない部分からのヒートブリッジが発生するし、「高気密高断熱」を謡う木造と比べると、そもそも断熱材の厚みも構造的に半分程度しか取れない。
解説
図のピンク色の部分が断熱材。
柱や梁の部分は断熱材が途切れるので、ここからヒートブリッジが発生する。

ヒートブリッジ対策のために、むき出しの鉄骨柱というデザイン性を諦めて、断熱処理の上で木工造作で覆うことは可能だが、部屋の内寸を考えると断熱は薄くせざるを得ない。
一般的には20~30㎜程度の吹き付け断熱となるので、気休め程度の断熱性にしかならない。
では、重量鉄骨造の場合は「高気密高断熱」は諦めなければならないのか。

否、対策方法もある。
「外断熱工法」だ。
住宅の一般的な断熱処理は、家の内側に断熱材を入れるものだが ───

逆に家の外側を断熱材で包む方式で、言うなれば「魔法瓶のような家」をつくることである。
ヘーベルハウスは軽量鉄骨造だが(重量鉄骨プランもある)この外断熱工法を採用している。
じゃぁそれでいいいじゃんと思うかもしれないが、実はこれが鉄骨造の場合はとくに難しい。
家を外側から包む断熱材を、どうやって固定するのかが最大のネックになるのだ。

前話のおさらいになるが、内断熱の場合は鉄骨胴縁の外側に外壁材であるALCパネルを直接取り付け、室内側に断熱材を吹き付けるのだが、外断熱工法の場合はこの構成がまったく異なる。
方法としては以下の2種類が考えられる。

- 鉄骨胴縁の外側に硬質ウレタンボードの断熱材を貼り、家全体を包む。
- 断熱材のさらに外側に通気胴縁を取り付ける。
- 通気胴縁の外側に、外壁材であるALCパネルを取り付ける。
ヘーベルハウスはこれに近い外断熱工法を採用している。

- 従来どおり、鉄骨胴縁の外側に外壁材であるALCパネルを直接取り付ける。
- ALCパネルの外側に硬質ウレタンボードの断熱材を貼り、家全体を包む。
- 断熱材の外側に通気胴縁を取り付ける。
- 通気胴縁の外側に、外壁材であるサイディングを取り付ける。
つまり、この方式は外壁がALCパネルではなくサイディングとなる。

この2パターンにより、家をまるっと断熱材で覆うことができ、魔法瓶のように屋外の寒い・暑いをシャットアウトする高い断熱性能を得ることが可能なのだが、上述のとおりこれが簡単ではなく、多くの工務店や設計事務所は「できない」という回答になる。
理由は、固定方法と構造強度の確証が困難だから。

例えば、パターン②の「ALCパネルの外側に断熱材を貼る」方法の場合、断熱材をどう固定するのかが難しく、実際に以下の課題が生じる。
- ALCパネルは多孔質でビスの保持力が弱い。
- 断熱材(硬質ウレタンボード)を直接ビス止めすると、耐風圧や剥離リスクがある。
ALCパネルは、分かりやすく例えるとブロック塀のような構造だから、小さな気泡のような穴が無数に開いているので、ビスが効きづらいし、強引に打ち込んだとしても剥落する恐れもある。

それだけでなく、外壁材のサイディングの固定方法にも課題が生まれる。
通常のサイディングは胴縁にビス止めするのだが、そもそも胴縁をどう設置するかが問題。
木造なら、ブラスターボードなどの外壁下地に胴縁をエアガンの釘で固定するが、パターン②の場合、下地となる部分が硬質ウレタンボードだったりALCパネルなので、釘が打てないし、上述のとおりビス固定も難しい。

パターン①の場合も然り。
鉄骨胴縁に硬質ウレタンボードをどう固定するのか。
硬質ウレタンボードに胴縁をどう固定するのか。
では、実際に鉄骨造での外断熱を実現しているヘーベルハウスなどの会社はどうしているのか。

硬質ウレタンボードやALCパネルを鉄骨胴縁に固定するための“専用金具”、“専用ブラケット”を用意しているのだ。
もっとも強度の高い鉄骨部分に金具を取り付けて、そこに断熱材も外壁材も“持たせる”という仕組みなので、多孔質のALCパネルにビスを打つなんてことも発生しない。

これで課題も解決と思うかもしれないが、残念なことにこれらの専用金具やブラケットというものは市販されてないのだ。
鉄骨造での外断熱工法を実現している会社は、競合との差別化のために自社オリジナルの金具を準備しており、独自の設計ノウハウが注ぎ込まれているのである。

何より強度も確証した専用金具を作ること自体、数の背景がないと叶わないことなので、大手の住宅メーカーやゼネコンでもない地場の工務店レベルでは無理な話なのだ。
というか、なんでこんなマニアックなことを工務店の設計士ではなく、施主の俺が頭をひねっているのかが不思議な話だが、ここが解決しない限りは前に進めなかったのである。
こんな話をぶち込んでくる施主って面倒くさいだろうなぁと今さらながら自覚している俺(笑)





コメント